今回お話を伺ったのは、商学部4年の河野 稜太朗(こうの りょうたろう)さん。
大学では、一橋大学体育会應援部に所属。
インタビューを通じて、過去の原体験から今に至るまで、自分自身を相対化し、丁寧にお話してくださる姿が印象的でした。
誠実さと努力家の一面を持ち合わせる河野さんは、どのような人生を歩まれてきたのか?
河野さんの素顔に迫っていきます。
目次
非の打ち所がない少年だからこそ味わった苦悩
高校まで埼玉で育った河野さんに、少年時代についてお伺いしました。
「とにかく人と違うことをすることが大好きで、目立ちたがりだったんですよ」
小中高と生徒会活動や文化祭の実行委員を務めた河野さん。
中高では文化祭実行委員長、高校では、生徒会副会長も経験。華やかな経歴をお持ちです。
そんな河野さんは、小学生の頃は、本好きで勉強も得意。足も早く、地域のソフトボールチームでもスタメンに選ばれていたそうです。性格も正義感が強く、真面目で真っ直ぐ。人懐っこくて、お喋りが大好きでなんでもやらせればできちゃうエリート小学生。さすがですね。ただ、当時大人びているせいか、同級生とはあまりウマが合わなかったという。
環境を変えようと中学受験をして、無事私立の中高一貫校に入学。
しかし、中学生に入っても、初めは同学年より先輩とよく仲良く遊んでいたそうです。
ようやく、中学生の後半くらいから、努力することと手を抜いて良いことのバランスを覚えるようになり、「人とうまくやる方法を知ったのもこの頃だったかな」と教えてくれました。
高校では、ダンス部、生徒会活動、勉強の3つに力を入れました。
ダンスは、ストリート系のロックダンス。
男性の先輩もかっこいいし、女性の先輩も綺麗で、キラキラした雰囲気に憧れて入部を決めたそうです。
ダンスが楽しい、もっと踊れるようになりたい!
やる気と希望に満ち溢れて入部した河野さんですが、高校1年生の夏に短期留学をして帰国してから、河野さんの部内での居場所がなくなっていました。
「自分で居場所を作るには、ダンスがうまくならなくちゃ認めてもらえない」
そう考えた河野さんは、夢中で練習をし、気づけば、2年生に上がるころにはジャンルのリーダーに投票で選ばれるくらいに、部員に認められるようになっていました。
高校時代のダンス部で学んだことは、「出る杭は打たれる、でも打てなくなるまで出ることってできる」こと。
河野さんの前向きな努力と、周りを惹きつける人間力が周囲に認められたのだろうと思います。
一橋大学に惹かれた理由
一橋大学を知ったのは、中学の頃。
とある授業で、将来の履歴書を書く時間があり、英語を使って仕事がしたいな、生活に携わる仕事がしてみたいな、と漠然と考えていた折に「商社」という言葉を知ったそうです。
規模もでかいし、モテそうだし、商社マンになりたい!商社マンになるには、商学部に行かなければ!
初志貫徹の精神で受験を乗り切り、2018年の春に一橋大学商学部に入学しました。
様々な課外活動に精力的に取り組みながらも、勉強もコツコツと続けていたそうですよ。
改めて受験期の選択を振り返ると、大学を決めた意思決定の根拠が安直であったとおっしゃっていました。
気になった筆者は、「一橋に入って良かったですか?」とお伺いすると
「良かったです」と即答。
ここで東大が良かったと言われたらどうしようかと思っていましたが、、、ふう、安心しました(笑)
波瀾万丈な大学生活のスタート
当時、一橋に入ることが目的となっていた河野さんは、大学に入ってからやりたいことを全く決めていなかったそう。
新歓について、元々経験していたダンスとソフトボールのサークル見学はしたものの、ピンとこなかったといいます。
高校の先輩が所属している応援部の見学でも行ってみるか、と兼松講堂前の応援部のデモンストレーションを見に行き、そこから河野さんの人生は大きく変わります。
「なんだ、これは!」衝撃を受けたと同時に、何か心がグッと掴まれたような大きな感動を覚えたそうです。
高校時代までは、ちょっとイケてる奴だったという河野さん。
目の前にいる学ラン姿の先輩方と自分自身を照らし合わせた時に、どう考えてみてもそこに自分がいる姿が想像つかなくて、ちょっと面白いな、やってみてもいいかもしれないなと感じたそうです。あれよあれよという間に気づけば入部していました。
大学生活を捧げた応援部で得たこと
河野さんの大学生活と言えば、「応援部」。
応援部は、一橋大学の体育会の応援を「リード」する存在。
リーダーとチアリーダーの2つの役割があり、河野さんはリーダーとして(リーダーは学ランを着て応援します)4年間活動してきました。
それでは1年生時代から激動の4年間を振り返っていきましょう。
1年生の時代は、全力で練習に励みました。練習メニューや応援部での活動は、ハードでついていくことに必死。他のことを考える暇もなく、体力的にも精神的にも鍛えられました。
特に変わったのは、精神面。無意識的に今まで持っていた「かっこいい自分でありたい」という薄っぺらいプライドと「恥ずかしい」という感情を捨て去ることで、一皮剥けたといいます。
激動の1年を駆け抜けた後に、やってきた2年生はより視野が広がり、色々な経験をすることができたそうです。
部内では、2年生ながら最上級生リーダーとなり(※)、部員を引っ張っていく立場に。
練習内容の決定やチームのマネジメントをする上で、他大学の様子を見にいき、自分に足りてない部分は何かを問い続けました。また、大学内の応援を通して、先輩や同期との交流が増えたそうです。
交流は大学内にとどまらず、三商大をはじめ、駒澤大学、東京大学など、様々な大学の応援部から刺激をもらいながら、一橋大学の応援部の強化に務めました。
しかし、ここで終わらないのが河野さん。
活動は、部内だけに止まらず、部外では、HSC(Hitotsubashi Sports Community)の運営にも携わりました。
体育会から一橋大学全体を盛り上げることを目標に、企画運営を行ったそうです。
※応援部では、学ランの人間を「リーダー」、コスチュームを着て踊る人間を「チア『リーダー』」と呼びます。
ここで、「2年生でリーダーになる」というのは、本来4学年いるはずのリーダー(=学ラン)部員が河野さんの代の先輩には在籍しなかったために、2年生(=1年生が入ってくるまでは最下級生)ながら最上級生を務める必要がありました。
誰も予想していなかった活動休止期間。自分に何ができる
「モチベーションがありながら、何もできない状態は苦しかった」
一橋大学のどの体育会も直面した活動休止。応援部にも大きな影響を与えました。
大学3年生の前半は、新型コロナウィルスの影響により、部活は全てオンラインでの活動となり、部全体としての活動が例年の約1/3まで減ってしまったそうです。
もちろん応援部のメインの活動である体育会の試合応援にも行くことができなくなりました。
2年生までは、応援やステージを通じて、目立つことや交流することに楽しさややりがいを感じてきましたが、今はその目的を果たすことができない。その中でどのように応援をとどけたらいいだろうか、という問いがひとつ。一方で、年々後輩が増えてきたリーダーという組織全体を底上げするには、強く逞しいリーダーを育てるためにはどうすればいいか、という問いを持つようになったそうです。
幸運にも、2年生から、組織の中で最上級生としてリーダーを経験してきた河野さんは、プレーヤーとしての立場とチームをまとめる立場から、より組織を俯瞰して考えることができました。そして、4年生に上がってからも、引き続き、組織をよくしていくために自分にできることは何か、常に考え続けて部活動に励みました。
「環境も変われば、考えも変わる。組織の新陳代謝を担う必要があり、自分も組織も変わり続けなければならない」
これまで応援部は「一橋大学全体のチアアップ」を理念に掲げてきたのですが、一橋大学の体育会人口が大学全体の3割弱である中で、「残りの7割に目を向けなくてもいいのだろうか」という問いから、
オープンキャンパスのボランティア、留学生への応援メッセージを皮切りに、学内外を問わず今後地域にも目を向けて活動を広げていきたいとおっしゃっています。
感性を大切にして生きる
充実した大学生活を過ごしている河野さん。
これまでの人生を振り返った時に「感性」と言う言葉を大事にされて生きていることを知りました。
きっかけは、大学2年生の時に、山口周著『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』を読んだこと。
「自分がこれまで行ってきた数々の意思決定を振り返った時に、感性が原点にあるんですよね。
応援部に入ったのも、感動という感情が湧き上がってきたからですし、ダンス部に入ったのも、先輩がかっこよかったから。
生徒会活動をやっていたのも、そこにいて楽しいからとかとか。お金が貰えるとか、それをすることで成績が上がるとか、結果として得られる対価よりもその瞬間、その場所でしか経験できないことが自分にとって大きな価値を持っているんですよ」
インタビューしている私もその本を読んだことがあるのですが、そこまで深く思考していなかった!とても心に刺さりながらお話をお聞きしました。
コロナ禍での余白の時間は、「感性」を磨くべく、アートを見に行ったり、読書をしたり、自転車で遠くへ出かけたり。
自分磨き、自分を知ることに多く時間を費やしたそうです。また、大学3年時からは一人暮らしを始め、ミニマリストに目覚めたといいます。
熱い男、河野 稜太朗の今後に迫る
「今持っている「感性」と自己効力感、つまり自分が輝ける場所、価値を発揮できる場所を見つけていきたいですね」
多少しんどくても、辛くとも、やりたいこと、やりがいを感じられるようなことをして人生を過ごしていきたいそうです。
お話が白熱し、かなり長くなってしまいましたね。
最後に、1つ。これまでの大学生活を振り返ってみてどうですか?と投げかけさせて頂きました。
「後悔はありません。ですが、現状に満足しているわけでもありません。自分はやってきたことは多いですが、できることは少ないです。普通コンプレックスを持ってるのかもしれません、現状に甘んじず、今後も色々挑戦していきたいです」
今回は、河野さんの生き様を深掘りさせていただきました。いかがでしたでしょうか?
一橋大学は、今回の河野さんのように部活動に全力を注いでいる人だけでなく、課外活動に励んでいる人など、多様な人が在籍しています。今回のインタビューを通じて、少しでも自分自身の今後の大学生活の参考になれば幸いです。
新入生でサークルか部活動かはたまたバイトか、まだ何をしようか迷っている皆さん。
こんな熱い先輩がいる応援部での学生生活を私は全力で推します!!
コメント